チック症

チックとは?

チックとは、意識せずに突然出てしまう素早く短い身体の動きや声を「くせ」のように繰り返すものです。運動チックと音声チックの2種類があります。

 運動チックには、目をパチパチさせる、白目をむく、鼻をヒクヒクさせる、口を開けたり曲げたりする、首を振ったりすくめたりする、腕をピクンとする、足をバタンとする、おなかをヒクヒクさせるなどがあります。

 音声チックには、風邪でもないのに咳払いをする、「アッ」とか「オッ」と声を出す、鼻をクンクン鳴らす、わいせつな言葉など「社会的に容認し難い言葉」を言ってはいけないと分かっているのに言ってしまう(汚言症)などがあります。

 チックを持つ子どもは多く、5~10人に1人は一時的にチックを呈するといわれています。6~7歳頃に最も多くみられますが、症状が軽ければ子どもも困らず、家族もチックとは認識せず「くせ」と思う程度で病院を受診することもありません。

心の病気なの?

生活の中でのストレスや不安によって症状が引き起こされたり、変化したりするため、「心の病気」と誤解されることがあります。また家族も、「育て方が悪かったのでは」と自責的になってしまうこともあります。しかし、チックの原因は生物学的因子、つまり「生まれつきチックの

起こりやすい脳の性質」であり、多因子遺伝が考えられています。「叱られた」、「学校で嫌なことがあった」など、何らかの出来事の後にチック症状が出る場合もありますが、それは原因ではなく、単なるきっかけに過ぎないことが多いと考えられています。

チックのことを叱らないで

チックはわざとやっているのではなく、子ども自身も意識せずにやっている行動です。叱っても止まりませんし、短時間なら意識して止められても、ずっと止めようとすると苦しくて疲れてしまいます。また、意識すると余計にチックが増える子どもが多いので、叱ってもプラスになることはありません。チックを見ても、「またやってる」とか「やめなさい」と注意せず、そっとしておいてあげてください。

特別な対応や育て方は不要です

 学校よりも家で症状が強く出る子どもが多いのですが、だからといって「家庭に問題がある」という訳ではありません。むしろ、家の方が緊張しなくて済むのでチックが増えるのです。叱るとチックが増えるのは一時的ですから、本当に必要な場面では、きちんと叱るようにしてください。テレビをみるとチックが増える子どももいますが、これも一時的なもので、それぞれのご家庭の基準で普通にみせても構いません。もし「これまで家族が過干渉すぎた」と感じるならば、世話焼きを少し控えるぐらいでよいでしょう。

日常生活で困らなければ治療は不要です

子ども自身が困らない限り、薬を使って治療する必要はありません。「チックがあると学校でいじめられるのではないか」と心配して治療を希望させるご家族もいらっしゃいますが、子どもが困っていない段階で、先回りして心配の種を取り除く必要はありません。チックがあっても、気にせず、困らずに普段の生活を送ることができれば問題ありません。チックが気になり出すと、周囲は四六時中そのことばかり気になってしまうかもしれませんが、「目をパチパチさせる変なくせ」ばかり強調してその子を見るのではなく、「思いやりのある優しい○○くん」と、その子を全体として、人格を持ったひとりの個人として評価する気持ちを忘れないようにしましょう。そして、子どもには「多少のくせがあっても、自分はこれで大丈夫なんだ」と自尊感情を持てるようにしてあげてください。

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