起立性調節障害(OD)

昼からは元気なんです

起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)は、思春期によくみられる自律神経機能不全で、思春期の子どもの約1割、概算で100万人程度いると言われています。「頭が痛くて朝起きられない」、「無理して起きたら、めまいがして立っていられない」、「身体がだるいけれど夕方には回復して、夜になると目がさえて布団に入っても寝つけず、遅刻や欠席が続き始めた」等々。子どもに繰り返しこのような状態がみられるとき、それは起立性調節障害かもしれません。朝に症状を強く認める傾向があるため、朝に起きられなくなり、登校しぶりや不登校になることもある一方、午後からは症状が改善するため、仮病(詐病)と間違われることもあります。夜間は元気になることから就寝時間が遅くなり、結果として生活リズムの乱れを生じます。一見すると、「寝不足」「怠け」「気持ちの問題」と軽く受け止めがちですが、そうした周囲の対応が本人を苦しめる非常につらい病気といえます。

診断の進め方

以下に示す起立性調節障害の身体症状が3つ以上、もしくは強い症状が2つ以上あり、鉄欠乏性貧血や心疾患、神経疾患、内分泌疾患など別の病気を患っていなければ、起立性調節障害を疑い、起立試験を行って診断します。その他に、「心身症としてのOD」チェックリストなどを用いて、学校や家庭のストレスが関与しているかどうかもチェックします。

【起立性調節障害の身体症状】

① 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい

② 立っていると気持ちが悪くなる、酷くなると倒れる

③ 入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる

④ 少し動くと動悸あるいは息切れがする

⑤ 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い

⑥ 顔色が青白い

⑦ 食欲不振

⑧ 腹痛をときどき訴える

⑨ 倦怠あるいは疲れやすい

⑩ 頭痛

⑪ 乗り物に酔いやすい

【心身症としての起立性調節障害(OD)チェックリスト】

① 学校を休むと症状が軽減する

② 身体症状が再発・再燃を繰り返す

③ 気にかかっていることを言われたりすると症状が増悪する

④ 一日のうちでも身体症状の程度が変化する

⑤ 身体的訴えが2つ以上にわたる

⑥ 日によって身体症状が次から次へと変化する

以上のうち4項目がときどき(週1~2回)以上みられる場合、心理社会的関与ありと判定し、「心身症としてのOD」と診断します。

正しい理解と対応

 起立性調節障害は怠け癖ではなく、自分の意思ではコントロールすることができない体の病気です。保護者や学校など周囲の人が病気への理解を深め、患者をサポートしていくことが不可欠です。治療としては、まずは日常生活の改善から取り組みます。例えば、立ち上がるときは頭を下げてゆっくりと起立したり、できるだけ長時間の起立は避けたり、毎日30分程度のウォーキングを行うことで筋力低下を防いだりすることが有効だと考えられています。また、体の中で循環している血液量を増やすために、1日あたり2L前後の水分と塩分10gを摂ること、夜は元気になったとしても、早めの就寝を心がけることも重要です。

薬物療法

起立性調節障害は体質によるところがあるため、治療の基本は適度な運動と水分・塩分摂取、生活リズムの改善ですが、効果不十分な場合には薬物療法も併用します。

 第一選択薬はミドドリンというお薬で、末梢血管を収縮させる作用があるため、起立直後の血圧低下を軽減することが出来ます。他には、アメジニウムというお薬が使われる場合もあります。こちらは交感神経活性が低下して、血圧・心拍数が臥位、立位ともに低下している場合に使用します。

 その他には、漢方薬の半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)、五苓散(ゴレイサン)、小建中湯(ショウケンチュウトウ)、睡眠改善用のラメルテオンなどを使用することもあります。

予後

軽症の場合、数ヶ月以内に改善しますが、翌年の同じ時期に再発することがあります。中等症以上でも適切に対応すれば16~17歳以降は9割程度は改善するといわれていますが、成人した後も体調不良時には症状が出現することがあります。

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