【てんかん】

脳の神経細胞の数は何百億ともいわれ、それぞれが弱い電気を出して活動しており、統制をとりつつ情報処理したり、運動の命令を出すなどの活動をしています。てんかんは、その神経細胞が、突然過剰に興奮し、その興奮が脳の全体や一部に伝わり、発作を繰り返しておこす病気です。発作が起きると様々な症状や検査の異常をきたします。発作は、いわゆる全身性のけいれん発作もありますが、急にぼーっとしたと思ったら急に戻ったり、口をもぐもぐさせる、体の一部分だけが勝手に動いてしまうなど、発作のタイプは様々です。また、年齢に応じて発症しやすい疾患がわかっており、それぞれの発作や検査所見などから、治療法が決定されます。てんかんとはこれらの様々な発作を起こす疾患を総称した病名と言えます。

てんかんは100人に1人程度の頻度で起きるとされており、小児では3歳以下までの子供に発症者が多い傾向があります。また、大人になると高齢に伴い、脳出血などの脳血管疾患などに伴って、てんかんが増える傾向があります。てんかんの原因としては何の異常もなかったのに急にてんかんを発症してしまう特発性てんかんと、何らかの神経の障害(けがや先天的な異常など)に伴って起きてしまう症候性てんかんに大きく分けられています。小児では0歳までに発症するてんかんは、この症候性てんかんが多く、成長に伴い特発性てんかんが増加していきます。

先ほど述べたように小児のてんかんには、それぞれ年齢に応じてその疾患を発症しやすい年齢というものがあります。以下に主なものを上げてみます。(もちろんほかにも頻度は低いものなどがあります)

新生児期★新生児けいれん 分娩時の低酸素や頭蓋内出血、出生後の低血糖など、様々な原因があり、原因により症状、予後なども様々。 原因のはっきり見つけられないようなけいれんなどは、予後が良いものもあります。★大田原症候群 生後3か月以内に発症する、ピクッとする点頭発作を繰り返す。脳波では特徴的な所見を認め(サプレッションバースト)、治療は非常に難しい。脳の形成異常などを伴うこともある。発達遅滞が強い。やがて後述のレノックスガストー症候群などに変化していくことも少なくない。指定難病の一つ。
乳児期★点頭てんかん(West症候群) 多くは重篤な脳障害に続いて、生後3か月から7か月ぐらいに発症する難治性のてんかん。ピクッとする点頭発作が特徴。寝入りばなや寝起きに発作が多い。脳波では特徴的な所見(ヒプスアリスミア)を認める。おおむね発達遅滞が認められる。こちらも指定難病の一つ。★乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラべ症候群) 生後4か月から6か月ごろ、1歳までに全身のけいれんで発症し、強直間代発作を繰り返す難治性のてんかん。発熱や入浴などで誘発されやすい。発作のコントロールが非常に困難で、発達遅滞もみられる。多動・集中力の低下・衝動性などの広汎性発達障害を伴うことも多い。指定難病の一つ。
幼児期★レノックス・ガストー症候群 1歳から8歳ぐらいの男児に多い。脳の形成異常や障害によるもの、また原因が明確ではないがこの膝下になる人など様々。また、発作も様々なタイプがあり難治性のてんかんの代表格。発達遅滞もほぼ必発。こちらも指定難病の一つ。★小児欠神てんかん 4~10歳に発症することが多く、女児に多い傾向があります。急に意識がなくなり(欠神発作)、突然戻る10秒程度の発作と、脳波の特徴的な所見が見られます(棘徐波複合)。発作時の記憶はなく、発作がおさまるとすぐに会話などができるため、周囲からボーッとしているだけに見えることがある。症状が進行すれば頻度が増加してくるのでそこで築かれることも多い。治療は抗けいれん薬で発作は止まることが多い。発達はおおむね良好。
学童期★中心・側頭部に棘波をもつ小児てんかん(ローランドてんかん) 小児のてんかんでは最も頻度は高い。睡眠時に発作が起きやすい。やや男児に多い。思春期ごろには、自然に発作も脳波も治っていくことが多い。治療は抗てんかん薬の内服が基本だが、無治療で経過観察することもある。発達面などでの問題を抱える子もいる。予後は基本的には良好。
思春期★若年ミオクローニーてんかん 思春期のてんかんの代表格。朝起きた後のぴくつきを認めるミオクローニー発作、全身性間代けいれんもほぼ必発。睡眠不足・疲労などで誘発されやすい。治療は抗てんかん薬の内服で効果は高い。女性に多い傾向あり。

これらは教科書的に有名な疾患の主なもので、判断が難しいものなどもあり、小児神経専門医による診断や治療が重要です。                                 

               

診断は脳波やMRIなどそれぞれの症例に応じて行われます。治療の基本は抗てんかん薬の内服を行い、発作を起こさないようにコントロールすることが基本ですが、難治性の発作もあり、手術やケトン食といった治療が行われることもあります。

参考)

日本小児神経学会 

www.childneuro.jp

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