感染症|ノロウイルス・インフルエンザ・RSウイルス

冬にかかりやすい3大感染症

冬の三大感染症ノロウイルスインフルエンザRSウイルス種類

ノロウイルス、インフルエンザ、RSウイルス。これらの感染症は、毎年秋ごろから春先にかけて流行することが多く「冬の3大感染症」とも呼ばれています。冬の3大感染症は、子どもだけではなく大人にも感染する病気です。冬が近づくと、当小児科クリニックでも親子で受診される方が増えます。家庭内での感染を防ぐためにも、症状や感染経路、対処方法を覚えておきましょう。

冬に増える感染症「ノロウイルス」

「ノロウイルス」は、感染性胃腸炎や食中毒の原因となるウイルスです。毎年11〜2月頃に流行することがほとんどですが、一年を通して発生しています。厚生労働省の発表によると、2017年に発生した食中毒のうちノロウイルスを原因とするものは、51.6%と半数以上。検査技術が進歩したことにより、近年は多くの発症例が報告されています。

ノロウイルスは感染力がとても強く、10〜100個と少量のウイルスでも感染するため集団感染が起きやすいことも特徴です。ウイルスの潜伏期間は24~48時間。主な症状は、吐き気や突然のおう吐、下痢、腹痛で、一般的に発熱は軽度です。通常このような症状が1~2日続いた後、回復に向かいます。

インフルエンザ

毎年冬に大流行するインフルエンザは、「インフルエンザウイルス」に感染することによって起こる病気です。例年12〜2月頃に流行のピークを迎えることが多く、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感といった全身症状のほか、のどの痛み、鼻水、咳など風邪と同じような症状もみられます。通常の風邪と比べて急激に強い症状があらわれることが特徴です。

RSウイルス

RSウイルス感染症は、「RSウイルス(respiratory syncytial virus)」による呼吸器の感染症です。日本を含め世界中に分布するウイルスで、生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%の子どもが少なくとも一度は感染するとされています。感染後4~6日間の潜伏期間を経て発症し、発熱、鼻水や咳など軽い症状で済むことが大半ですが、初めて感染発症した場合や乳幼児は症状が重くなりやすく、ひどい咳やゼーゼーという呼吸音、呼吸困難などの症状があらわれることがあるため注意が必要です。

冬の3大感染症の感染経路

「下の子がノロウイルスと診断された頃、上の子にもおう吐や下痢の症状が…。必死に看病してようやく2人とも回復したと思ったのに、今度はパパが…(泣)。家庭内での感染、どうしたら防げるの?!」冬になると、小児科を受診される患者様からよく伺うお話です。冬の3大感染症は、幼稚園や保育園だけでなく、家庭内で広がってしまうことも少なくありません。流行の拡大を防ぐためにも、まずは感染経路を正しく知っておきましょう。

ノロウイルスの主な感染経路

ノロウイルス感染経路

(1)感染した人の排泄物やおう吐物などから人の手を介して感染する場合
(2)感染者の咳やくしゃみなどから感染する場合
(3)飲食店や家庭で調理をする人がノロウイルスに感染しており、その人の手や調理器具を介してウイルスに汚染された食品を食べた場合
(4)汚染された二枚貝を生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
(5)汚染された井戸水や簡易水道を消毒が不十分な状態で摂取した場合

(1)(2)はウイルス性急性胃腸炎の原因に、(3)(4)(5)はウイルス性食中毒の原因になります。(4)の二枚貝は、流行期に生で食べることの多いカキのほか、ハマグリ、アサリ、シジミ、ムール貝なども注意が必要です。

インフルエンザ、RSウイルスの主な感染経路

インフルエンザやRSウイルスの感染経路には、「飛まつ感染」と「接触感染」があります。飛まつ感染とは、感染した人が咳やくしゃみをしたときに飛まつ(しぶき)に含まれて放出されたウイルスを、近くにいる人が鼻や口から吸い込んでしまい感染すること。「接触感染」は、感染している人と直接接触したりウイルスが付いたものに触れることで間接的に感染することをいいます。たとえば、感染者が咳やくしゃみをおさえた手でドアノブやスイッチなどをさわった後、その場所に別の人が触れ、さらにその手で自分の鼻や口をさわることによってウイルスに感染してしまうのです。

家庭でのケアと受診のポイント

ノロウイルスやRSウイルスには根本的な治療薬がないため、治療は対症療法が行われます。おう吐や下痢などの症状があるときは体から多くの水分が失われるため、脱水症にならないように水分と塩分を十分に補給しましょう。下痢止めの薬はウイルスの体外排出を遅らせることがあるので、使用しないことが望ましいでしょう。また、嘔吐の後は脱水症を防ぐために、経口補水療法を行う事をお勧めします。経口補水液をスプーン1杯ずつ、5分ほどの間隔をあけながらゆっくりと水分摂取をする事が重要です。経口補水液は市販でもOS-1という商品が販売されていますが、自宅で作ることもできます。

経口補水液の作り方

インフルエンザの治療には、多くの場合、タミフルやリレンザといった抗インフルエンザウイルス薬が使われます。適切な時期(発症から48時間以内)に薬の服用を開始すると、発熱期間は通常1~2日間ほど短くなり、鼻やのどから排出されるウイルスの量も減少します。インフルエンザの疑いがあるときは小児科を受診し、医師に処方された薬を正しく使うことが大切です。
いずれの感染症も、夜間に症状が出た場合、多くは翌日を待ってからの受診で大丈夫です。ただし、脱水症状や呼吸困難など気になる症状が見られる場合は救急外来を受診しましょう。

ノロウイルスの二次感染を防ぐために

ノロウイルスの二次感染を防ぐ

感染者の排泄物やおう吐物には大量のウイルスが含まれています。子どもの便やおう吐物などを処理したときにうっかり感染してしまうことのないよう、以下のことに気をつけましょう。

  • 汚物を処理するときは、マスクや手袋を着用して直接ふれない
  • ノロウイルスは消毒用アルコールに強いので、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)またはこれを含む塩素系漂白剤で拭き、その後に水拭きする
  • 処理に使ったぞうきんやタオル、マスク、手袋は袋に入れ、密閉して捨てる
  • 処理後は流水でしっかり手を洗う

冬の3大感染症の予防方法

ノロウイルス予防

ノロウイルスやRSウイルスには有効なワクチンはありません。手洗いやうがいを徹底する、流行期にはマスクを着用する、規則正しい生活を送るといった、基本的な感染症予防を心がけることが必要です。また、二次感染を防ぐために感染した人が使ったタオルなどを共用しないように気をつけましょう。
天然の二枚貝によるノロウイルスの感染を防ぐためには、中まで十分に熱を通すことが重要です。中心部を85〜90℃で90秒以上加熱してから食べましょう。

インフルエンザの最も有効な予防方法はワクチンの接種です。発症を防ぐとともに、発症した場合も重症化を防ぐことができます。小さな子どもの場合は、まれにインフルエンザから急性脳症を起こして命にかかわるケースもあるので、安心のためにも予防接種を受けておくことが大切です。

有明みんなクリニック・有明こどもクリニックの取り組み

小暮裕之先生

ノロウイルスは特に冬に多く感染力が強いので家族の中の二次感染を防ぐことも重要です。インフルエンザはワクチン予防が一番。13歳以下のお子様は2回接種をお勧めしています。本格的な流行期に入る前に早めに受けましょう。今年も有明みんなクリニック・有明こどもクリニックでは10月からワクチン予約がスタートしています。

有明みんなクリニック・有明こどもクリニック理事長 小暮裕之先生 プロフィール

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