夜尿症

他の子もおねしょしているの?

 夜尿を主訴にクリニックを受診される親御さん方は、「同級生の子ども達も皆、おねしょしているのかな?」、「いつになったら治るのだろう?」、「放っておいたらどうなるのだろう?」など多くの疑問を持って受診されます。

 日本の調査では、小学校に入学する時点で約10人に1人、卒業する時点では約30~50人に1人(つまりクラスに1人程度)の子が夜尿をしており、男児に多いと報告されています。夜尿症患児の総数は約80万人を上回ると推計されますが、すべてが医療機関を受診している訳ではありません。もともと、命にかかわる疾患ではないことや、おねしょのことを口にすること自体が恥ずかしいと考える日本人の気質、放っておいてもそのうち治るだろうと多くが経過観察されていることなどが受診をためらう理由と考えられます。

 夜尿症の経年齢的な自然消失率は毎年約15%と報告されています。しかし、生活指導や薬物治療など積極的な医療的介入を行えば、年に約15%とされている治癒率を約50%に上げることが出来ます。つまり治癒率が2~3倍になり、夜尿から解放されるのを2年以上早めることが出来るのです。小学校入学時点で夜尿がみられる場合は、受診をお勧めしています。

夜尿症

生活指導のポイントは?

 夜尿症治療の第一は生活習慣の見直しです。ガイドラインには下記が列挙されています。

① 日中に十分な飲水をすること。日中にたくさん水分を摂り、何度もトイレに行っていれば、夜にのどが渇くことは少なくなります。

② 朝食・昼食を十分に摂り、夕食を就寝2時間前に済ませること。

③ 夕食後は水分制限を行う(コップ1杯程度まで)。夕食時には味噌汁や濃い味の食べ物は避けるようにしましょう。

④ 就眠前の完全排尿の励行。就寝前の歯磨きの前後に2回トイレに行き、残尿がないようにしましょう。

⑤ 深い睡眠と関連する抗利尿ホルモン分泌のため遅寝を避ける。最終排尿後に寝つけず時間が経った場合は、再度トイレに行って排尿してから寝床につくようにしましょう。

⑥ 夜間睡眠中に中途覚醒を強制しない。決まった時間に強制的に起こしてトイレに行かせることは、治療に有益ではないと言われています。

⑦ 睡眠中の寒さや冷えから身体を守る。夜尿症の子には「暑がりの冷え性」が多いと言われています。腹巻や靴下などで下半身(臍から下)が冷えないようにして寝るようにしましょう。

どんなお薬を使うの?

 夜尿症治療の第一は生活習慣の見直しですが、それだけで改善がみられない場合は飲み薬による治療を行います。主に使われるお薬は、抗利尿ホルモン薬と抗コリン薬の2種類です。

 夜尿症は就寝中の抗利尿ホルモン(おしっこが作られにくくするホルモン)の分泌が不十分なために起こる夜間多尿が一因と考えられています。そこで、ミニリンメルトという抗利尿ホルモン薬が夜尿症の治療に用いられます。毎晩就寝の30分~1時間前に内服します。口腔内崩壊錠のため、舌下で溶解させ、口腔粘膜から吸収させます。口の中で溶かさずに飲み込むと吸収効率が低下し、十分な薬効が得られないため注意が必要です。

 抗コリン薬は膀胱が収縮するのを抑制する作用があるお薬です。膀胱が収縮しにくくなることで膀胱容量を増大させたり、無意識に膀胱が収縮して排尿してしまうのを減少させる作用があります。ベシケア、ポラキス、バップフォーなどがあります。副作用として便秘があるので注意が必要です。抗コリン薬は単独での治療効果は低いとされていますが、併用療法として意義があるお薬です。

アラーム療法ってなに?

 アラーム療法は、パンツにセンサーを装着し、夜尿でパンツが濡れだすとアラームが鳴り、患児を起こして残尿を排尿させるということを毎日続ける治療法です。

 夜尿症の原因には、夜間睡眠中の多尿、膀胱容量の低下、睡眠中の蓄尿機能の未熟性、深い睡眠などが関与していると考えられています。睡眠と覚醒の調節がうまく働いておらず、睡眠中に蓄尿して朝目覚める時まで全部溜め切って排尿することができず、途中で排尿してしまうと考えられています。アラーム療法がどうして夜尿症に対し効果があるのかは不明な点も多いのですが、アラーム音による覚醒刺激が、脳内の睡眠・覚醒・排尿中枢の調節に何らかの影響を及ぼしていると考えられています。

 夜尿症診療のガイドラインでもアラーム療法は推奨度の高い治療法と位置付けられています。しかし、私見ですが、毎晩真夜中にアラームが鳴って子どもを起こしトイレに行かせるということを続けていると、親も子も疲弊してしまい、治療を途中で断念してしまうことが実際には多いように感じています。

外来経過観察のポイント

 夜尿症の原因は、夜間の排尿のコントロールが未熟なために起こるのであって、わざと夜尿をしているのではなく、子ども自身の責任ではありません。夜尿症が軽快せずに、年長児まで持続すれば、子どもの自尊心が損なわれ精神的負担になります。また親のQOL(生活の質)も損なわれ、親にとっても精神的負担になります。

 頑張って治療し、毎日夜尿していた子どもが夜尿しなかった日ができ、夜尿が改善するとともに生き生きとし、治癒すると子どもはもちろん、親御さんも晴れ晴れとした表情で喜ばれます。夜尿症は自然に治る可能性もありますが、早く治したければ子どもの努力と親の協力が必要です。夜尿症はみんなで治す病気です。夜尿がなかった日には子どもをしっかり誉めてあげましょう。

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