甲状腺機能低下症
甲状腺は鎖骨の上にある蝶々型の臓器です。
甲状腺は甲状腺ホルモンを産生します。甲状腺ホルモンは全身に作用し、新陳代謝を活性化させ、生命活動維持には必要不可欠なホルモンです。小児期では、胎児の発育や子供の成長に重要な役割を担っています。
小児の甲状腺機能低下症の場合は、先天性と後天性があります。
先天性の場合には、成長に関わるホルモンのため、早期発見・治療が必要となります。多くは、出生時のスクリーニングで発見されます。
後天性では、頸の腫れ(甲状腺腫)で発見されることが多いです。
甲状腺ホルモンが低下すると、上記のような症状が起こります。
・低身長:成長障害のため、身長増加率が低下します。
・全身のむくみ:起床時のむくみが特徴的。声帯にもむくみを生じ、声が低くなってしまうこともあります。
・皮膚がかさかさしてかゆみを伴う
・髪の毛が減る:汗が減り脱毛症状が著明に現れる
・手足の冷え:代謝が低下し、寒さに弱くなる
・食欲低下と体重増加:胃腸の機能が低下し、食事量が減ります。一方で、新陳代謝が低下しているため、むくみがたまり体重が増えます。
・便秘:胃腸の代謝機能低下のためです。
・脈が遅くなる
・無気力
・月経異常:月経不順だけではなく、過多になることもあります。
甲状腺機能低下症で代表的な疾患は橋本病です。
橋本病は、自己免疫が自身の甲状腺を攻撃し起こる疾患です。これにより、甲状腺に慢性の炎症が起きており、慢性甲状腺炎ともいいます。症状は必ずしも機能低下だけではなく、甲状腺の腫れ(頸の腫れ)を起こすこともあります。
橋本病は甲状腺の病気のなかでもとくに女性の割合が多く、男女比は約1対20~30程度と言われています。
診断は下記の検査で行います。
- 採血検査:甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、抗甲状腺抗体や甲状腺ホルモンにより影響が出る項目(コレステロールなど)
- 超音波検査:甲状腺の腫れがないか確認すること、腫瘍の合併や悪性リンパ腫発症がないか確認する
治療は、主に甲状腺ホルモン内服治療です。
しかし、橋本病の場合は、全てが甲状腺機能低下症になるわけではありません。甲状腺の炎症の程度が軽度であれば甲状腺機能は正常であり、炎症が進行すると甲状腺の働きが悪くなり、甲状腺機能低下症となります。
甲状腺機能低下症の明らかな症状のある方は橋本病の約10%で、約20%は症状のない軽度の低下症で、残りの約70%は甲状腺機能が正常です。橋本病だからといって全ての方が治療対象になるわけではありません。
他にも、
・甲状腺腫大を伴わずに甲状腺機能低下を起こす萎縮性甲状腺炎
・甲状腺に感染して発熱や頸の腫れを起こす急性化膿性甲状腺炎
・小児期には頻度が少ないが一過性の甲状腺ホルモン過多から低下状態になる無痛性甲状腺炎
などがあります。
上記の症状や頸の腫れがある場合はご相談ください。
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