クループ症候群
ヒトの口から喉への構造として、まずは口、その奥に咽頭、さらに喉の付近が喉頭とよばれていますが、この喉頭から気管と食道に枝分かれします。食道から気管に枝分かれする部分に声帯、つまり声を出すところがあります。クループ症候群は主にこの声帯付近が狭窄、つまり細くなってしまうような状態となることで、犬が吠えるようなとか、オットセイの鳴き声のような、などと表現される特徴的な咳(犬吠様咳嗽)が現れます。
年齢としては6か月から4歳ぐらいの子どもによくみられる疾患です。特に1歳から2歳程度の子供に頻度が高い疾患で、中には何度かクループ症状を繰り返すお子さんも見られます。
原因
もっとも多い原因はウイルス感染で、原因ウイルスとしてはパラインフルエンザウイルス(いわゆる冬にはやるインフルエンザウイルスではありません!)、や冬期の有名なインフルエンザウイルス、あるいはほかの風邪を引き起こすウイルスでも起きうる病気です。ウイルス感染以外の原因には、異物などによるもの、アレルギーや胃食道逆流、さらに最も重要な病気である急性喉頭蓋炎(後で詳しく・・・)などがあります。
症状
症状としては、先ほど述べた犬吠様咳嗽のほか、息を吸うときに喉や肋骨がペコペコと凹んでしまう(陥没呼吸)、声がかれる(嗄声)、ゼイゼイするなどが見られます。特に犬吠様咳嗽は特徴的で、特に、夜は悪くなりやすい傾向があるようです。また、風邪のかかり始めにこのクループ症候群が出現することが多く、特に鼻水が出始めた、咳が出始めたころの夜に、このような咳が出た場合は注意が必要です。重症になるとぐったりする、唇の色が悪い、唇の色が悪い、苦しくて横に寝ることができない、水分が痛くて呑み込めないなども見られます。これらの症状は緊急で受診が必要な症状です。基本的には犬吠様咳嗽が出たら救急外来への受診をした方が良いでしょう。
治療
治療は原因によりますが、ウイルス感染によるものであれば、安静を保ちつつ喉の腫れによる狭窄を改善するため吸入を行ったり、ステロイドの投与が必要になります。治療によって症状の改善があまり思わしくないような場合は、治療を繰り返していくために入院が必要なこともあります。軽症であれば病院での症状とステロイド内服しながら自宅で様子を見ることも少なくないですが、自宅ではお部屋の加湿は十分しておくと少し楽になるようです。また、大泣きしてしまうと一気に症状が悪化することもあるのでゆっくり落ち着いた環境で過ごさせてあげることも自宅でできる対応方法です。
※急性喉頭蓋炎
クループ症候群の中の原因で、この急性喉頭蓋炎は非常に注意すべき疾患です。喉頭蓋とは喉頭の気管と食道が枝分かれする場所にあり、食物が喉を通る際に食べたものが気管に間違って入っていってしまわないように蓋をしてくれるものが喉頭蓋です。この喉頭蓋に主にインフルエンザ菌(これも冬に流行するインフルエンザウイルスではありません、赤ちゃんが最初に予防接種するヒブワクチンで予防するインフルエンザ菌です!)などが増殖して急激に腫れ上がり、気管の入り口をふさいでしまうこともある、つまり窒息してしまう可能性のある重篤な病気です。症状として、とても喉が痛くなる、急に進行する呼吸困難、よだれが急激に増える、顎を突き出して呼吸をしないと呼吸できない(こうなったら救急車です!)などの症状が見られます。急性喉頭蓋炎は緊急に治療が必要な病気であり、早期に発見し、対応することが必要なためクループ症候群の兆候がみられたら、早めの受診をお勧めします。